「シェアハウス」と聞くと、多くのひとが「若者の仮住まい」をイメージするかもしれません。ですが50代・60代のシニア層の間で、シェアハウスへの関心が高まっています。
子どもの独立、熟年離婚、定年後の孤立した生活への変化。
人生の転換期を迎えた大人たちが、「プライバシーを守りながらゆるくつながる」住まいとしてシェアハウスを選び始めているのです。
この記事では、50代・60代がシェアハウスを選ぶ理由、多世代共生の実態、メリット・デメリット、費用相場、よくある疑問まで、データと事例をもとに詳しく解説します。
目次
シェアハウスが「若者のもの」になった背景

日本でシェアハウスという住まいが、一般に認知されたのは2000年代に入った頃から。当初は「ゲストハウス」とも呼ばれ、主に上京したての社会人や学生など、初期費用を抑えて都心に住みたい若年層に支持されていました。
当時の物件は設備が簡素なものも多く、「プライバシーよりも賑やかさ・コスパ」を重視した層に向けて設計されていました。そのため「うるさい」「落ち着けない」という印象が大人世代に定着し、中高年層にとって縁遠い存在であり続けたのです。
しかし2010年代以降、物件の質は大きく向上し、完全個室・防音設備・宅配ボックス完備といった設備が標準化され、「大人が快適に暮らせるシェアハウス」が続々と登場しています。
増えている50代・60代のシェアハウス入居者

国土交通省の「住宅・土地統計調査」によると、60歳以上の単身世帯数は増加傾向にあり、孤立・孤独死のリスクを不安視する声も社会的に高まっています。
こうした背景を受け、シェアハウス運営事業者の間でも中高年向け物件やシニアフレンドリーな多世代物件を展開する動きが活発化しています。
【市場動向】
「30代以上限定」「50代歓迎」をコンセプトに掲げるシェアハウスは、首都圏を中心に増加しており、空室率が低く安定した入居率を維持している物件も多いとされています(各運営事業者の公開情報より)。
かつては「若者の住まい」一択だったシェアハウス市場が、今や幅広い年代の選択肢へと変化しつつあるのです。
増加傾向:65歳以上の単身世帯は大幅に増加しており、2050年には2020年比で男性1.8倍、女性1.3倍に達する見込みです。
※国土交通省の資料(主に令和5年速報・平成30年確報)
50代が住まいを見直す3つの主な理由

50代、シニア期にはいるこの時期に、一人世帯の住まいを見直すきっかけとは何があるのでしょうか?気になる点をまとめてみました。
① 子どもの独立・単身世帯への変化
子どもが巣立ち、ファミリー向けの広い住居が「持て余す空間」に変わるタイミングは多くの50代が経験します。また、熟年離婚や生涯独身を選択する方の増加も、単身世帯増加の背景にあります。
「広い家に一人でいるより、コンパクトに暮らしながら誰かの気配を感じたい」そんなニーズに応えるのがシェアハウスです。
② 老後を見据えた住居費の最適化
老後の生活費を試算したとき、現在の家賃・光熱費・管理費を払い続けることへの不安を感じる方は少なくありません。
シェアハウスでは光熱費・インターネット代・共用備品代が家賃に含まれるケースが多く、支出の見通しが立てやすいというメリットがあります。
【コスト例】
- 一人暮らしで家賃8万円+光熱費1.5万円+ネット代0.5万円=月約10万円くらい
- シェアハウスなら共益費込みなので、月6〜8万円台に抑えられるケースも
(※注意:物件・地域によって変動あり)
③ 孤独・孤立リスクへの予防的対策
定年退職後に人間関係が急に希薄になり、「今日、誰とも話していない」という日が続く。
これは決して他人事ではありません。
厚生労働省の調査*でも、高齢者の孤独感と健康リスクの相関が指摘されており、「緩やかなつながりを持てる住環境」への関心が高まっています。
シェアハウスは、深い関係を強制せずに「誰かの気配がある」という状態を日常的に作り出せる環境として、孤独の予防策としても注目されています。
多世代シェアハウスとは?特徴と実態

多世代シェアハウスとは、特定の年齢層に限定せず、20代〜60代以上が同じ建物で暮らす住まい形態です。
若者向けシェアハウスのような「パーティー文化」よりも、落ち着いた生活空間と暮らしの質を重視した物件が中心です。
欧米の「インタージェネレーショナル・リビング」との共通点
欧米では「インタージェネレーショナル・リビング(世代間共生住宅)」と呼ばれる形態が広く普及しています。
学生と高齢者が共同生活することで家賃負担を軽減し、互いの生活を支え合う仕組みが定着しています。日本でも、こうした考え方を取り入れた物件が登場し始めています。
多世代シェアハウスの特徴
多世代シェアハウスのおおまかな特徴は、
- 共用部:広いリビング・キッチン・ランドリーなどを共有
- 個室:鍵付き完全個室で、プライバシーをしっかり確保
- 入居者層:20代から60代以上までミックス
- 物件コンセプト:「交流あり」「静かな共同生活」など多様
共有スペースではハウスメイトと交流をしつつ、個室でしっかりとプライバシー確保されています。ほどよい距離感を保てるのも、特徴的ですね。
50代からシェアハウスで得られる5つのメリット

50代でシェアハウスを選ぶメリットには、どんな事があるのでしょう?
さっそく見ていきましょう。
① 「ゆるいつながり」で寂しさがまぎれる
家族でもなく、友人でもなく、でも他人でもない。シェアハウス独特の距離感は、しがらみを嫌う大人にとって、心地よいコミュニティとなります。
「おはよう」「お先に」の一言が、日常に笑顔をもたらします。
② 世代を超えた刺激と学び
若い世代から最新のテクノロジーや価値観を吸収して、若い人たちへ自らの人生経験を伝える。こうした学びは脳の活性化にもつながるとされ、年齢を問わず知的好奇心を刺激します。
③ 生活費のスリム化
光熱費・通信費・共用備品代が家賃に含まれるケースが多く、毎月の支出が予測しやすくなります。老後の資産計画を立てる上でも、支出の見通しが立てやすい点は大きなメリットですね。
④ 個室でプライバシーをしっかり確保
現代のシェアハウスは、防音性の高い完全個室・施錠設備・宅配ボックスが標準装備の物件も多く、「一人の時間」と「みんなの時間」を自分でコントロールできます。
「共同生活=プライバシーがない」というのは昔の話です。
⑤ 防犯・安心感
一人暮らしに比べ、常に誰かが家にいる状況が生まれやすいシェアハウスは、防犯面でも安心感が高いとされています。万が一の体調不良の際も、住人がいることで早期発見につながりやすい環境です。
知っておきたいデメリットと対策

デメリット | 詳細 | 対策 |
生活リズムの違い | 起床・就寝時間が住人によって異なる | 「静音ルール」がある物件を選ぶ |
共用スペースの使い方 | キッチン・洗面台の使用順番でストレスが生まれることも | 入居前にルールの詳細を確認する |
合わない入居者がいる場合 | 価値観や生活習慣の違いでトラブルになるケースも | 運営会社のサポート体制・ルール整備を確認する |
仮住まい感が残る | 長期居住への抵抗感がある方も | 「選んだコミュニティ」として捉え直す |
費用相場と一人暮らしのコスト比較

項目 | 一人暮らし(賃貸) | シェアハウス |
家賃(東京23区) | 7〜12万円 | 5〜9万円(共益費込みが多い) |
光熱費 | 1〜1.5万円(別途) | 共益費に含まれることが多い |
インターネット | 約4,000〜5,000円(別途) | 共益費に含まれることが多い |
家具・家電 | 購入が必要(数十万円) | 備え付けのケースが多い |
初期費用 | 敷金・礼金込みで50〜100万円以上 | 敷金・礼金なし物件も多く10〜30万円程度 |
※上記は目安であり、物件・地域・条件によって大きく異なります。必ず各物件の詳細をご確認ください。
シェアハウスが向いている人・向いていない人

とはいえ、人には向き・不向きはつきものです。シェアハウスにも向いている人、向かない人は当然あります。それぞれの特徴をまとめてみました。
シェアハウスに向いている人
- 「誰かの気配」がある環境で安心して暮らしたい方
- 生活費を合理的にコントロールしたい方
- 新しい人間関係や刺激に前向きな方
- 定年後の孤立・孤独をあらかじめ予防したい方
- 身軽にダウンサイジングしたい方
シェアハウスに向いていない人
- 音や他人の生活リズムに非常に敏感な方
- キッチン・洗面台など共用スペースを独占して使いたい方
- 在宅勤務で一日中プライベート空間が必要な方(専用個室が確保できない場合)
- 長期的な「資産としての住まい」を重視する方
よくある質問(FAQ)

シェアハウスは分からないことばかり、という声も耳にします。
よくある質問をまとめたので、参考にしてみてください。
Q:50代・60代向けのシェアハウスはどうやって探せますか?
A:「シェアハウス 多世代」「シェアハウス 30代以上」などのキーワードで検索するほか、シェアハウス専門ポータルサイト(ひつじ不動産、Share! Share! Share!など)では、年齢層・コンセプトで絞り込み検索が可能です。内覧の際にコンセプトや入居者層を直接確認することをおすすめします。
Q:入居するまでの流れと費用はどのくらいかかりますか?
A:一般的な流れは「問い合わせ→内覧→審査→契約→入居」です。費用は物件により異なりますが、敷金・礼金なしの物件も多く、初期費用が通常の賃貸より低く抑えられるケースが大半です。目安として賃料の1〜2ヶ月分程度で入居できる物件もあります。
Q:住人とのトラブルが心配です。サポート体制はありますか?
A:多くの運営会社は管理スタッフが常駐または定期巡回しており、住人間のトラブル対応窓口を設けています。契約前に「どのようなトラブルが起きやすいか」「どう対処するか」を運営会社に直接確認しておくことで、入居後の安心感が高まります。
Q:契約期間の縛りはありますか?
A:物件によって異なりますが、最短1ヶ月から入居可能な物件もあります。通常の賃貸契約(2年更新)と比べて柔軟性が高いのがシェアハウスの特徴のひとつです。ただし「最低入居期間3ヶ月」など条件を設けている物件もあるため、事前に確認してください。
Q:共用スペースの清潔さや管理はどうなっていますか?
A:多くの物件では定期清掃スタッフが入り、共用部の衛生管理が行われています。住人間で当番制を設けている物件もあります。内覧時に実際の共用スペースの状態を目で確認することが最も確実です。
まとめ

シェアハウスは、若者の仮住まいというイメージではなく、今や多世代が自らの意志でコミュニティを選ぶ「大人の住まい」へと進化しています。
特に50代・60代にとって、シェアハウスはこのような価値があります。
- 老後の孤立・孤独を「予防」するゆるいつながり
- 生活費を合理的にコントロールできる経済性
- プライバシーを確保しながら安心感が得られる環境
- 世代を超えた学びと刺激
人生の新しい章を迎えるタイミングで、「多世代シェアハウス」という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか?まずは気になる物件の内覧から、始めることをおすすめします。
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